結び — これから独立するあなたへ

預金残高500円で、震える手で交通整理のアルバイトに電話をかけていた私が、いま売上9500万円という結果を出せているのは、飛び抜けた「技術」があったからではないと思っています。

「博士号を取って、ソニーや東大にもいたのに」という自分の言葉が、いまも耳に残っています。あの時の私には、誰かを喜ばせるという視点が1ミリもありませんでした。変われたのは、「すべては自責」と気づいたあの日からです。

この7年を振り返ると、気づきは6つありました。

自分の周りに起きる不都合を人のせいにしている限り、何も変わらないこと。「技術」は人を喜ばせるための手段でしかなくて、スキルよりも、目の前の人の役に立とうとする在り方の方がずっと効いてくること。仕事はGiveの種まきで、収穫はいつも時間差でやってくること。ゴミ拾いが1500万円になるまでには4年かかりましたし、夜8時に友人を帰らせて走った夜の恩返しは、翌年、思いもよらない形でやってきました。

それから、稼ぐ目的を自分の外に置くこと。自分のためだけに頑張るのには限界が来ますが、大切な誰かのためだと思えた時、単価への迷いが消えました。徳を積むこと。余裕を持って目の前の人と向き合って、相手の言葉の一段奥にあるものを見ようとすること。最後に、ご縁はタイミングと人と自分の在り方の掛け算で、そのうち自分で変えられるのは在り方だけだということ。

もし今あなたが「どうやって仕事をもらえばいいか」「単価が上がらない」「無理難題がつらい」と悩んでいるのなら、一度立ち止まって、自分に聞いてみてほしいんです。

目の前のお客様の「人生のステージ」を、想像できていますか。今日、余裕を持って目の前の人と向き合えましたか。損得を抜きにして「相手に喜んでもらいたい」と思えていますか。

独立して生きていく道は、平坦ではないです。でも、20年30年とお付き合いするつもりで目の前の人に向き合い続けていれば、道はどこかで開けると思うんです。相手のために本気で汗をかく人を、世の中はそんなに放っておかない気がします。目の前の小さなゴミ拾いからでもいいし、今日誰かに「ありがとう」と伝えることからでもいいと思います。

知覧で、トメさんのお孫さんからいただいた言葉を、最後に置かせてください。

「『道徳』という言葉を知っていますか?道徳の『道』の字は、自分の進む道——たとえば自分の生業、仕事のことだと思ってください。道徳の『徳』の字は、良き行いをすること。自分の仕事で良き行いを心がけてください。自分で目標を決めてください。その目標に向かって精進することです。その目標が達成されたらまた次の目標を決めてください。それを繰り返すのです。終わりはありませんよ。」

いまの私は、これを仕事の定義だと思ってやっています。

あなたの独立が、関わる人たちを笑顔にするものになるように、応援しています。

そして、もう少しだけお付き合いいただけるなら。続く第二部では、これらの出来事の手前で私がずっと意識してきた、「在り方」の話をさせてください。


次の章へ → 序章 — なぜ「在り方」の話をするのか

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